2022.05.25
職場のトラブル解決をサポート!個別労働紛争の解決制度を解説します
新型コロナウイルスの感染拡大で私たちの雇用環境は大きく変化しました。いまや「ウィズコロナ」とも言われ「新しいライフスタイル、新しい働き方」が求められる中、テレワークや在宅勤務を導入したという会社も多いのではないでしょうか。また、賃金カット、人員削減、解雇・雇止め、内定取消し等を迫られるケースも増加しています。こうした背景から、これまではトラブルとならなかった事柄についても企業における新たな労務問題として顕在化することが予想されます。
トラブルに直面した時、裁判で解決するのも1つの方法ですが、裁判以外にも、紛争解決の制度があることをご存じでしょうか。今回は、職場のトラブル解決をサポートしてくれる「個別労働紛争解決制度」「労働審判」について簡単にご紹介します。
1.個別労働紛争解決制度とは?
個別労働紛争解決制度とは、個々の労働者と事業主との間で起きた個別労働紛争について実情に即した迅速かつ適正な解決を図る事を目的とした制度で、①労働相談②都道府県労働局長による助言・指導、③紛争調整委員会によるあっせんの3つの制度があります。
①労働相談
各都道府県労働局や労働基準監督署等に設置されている総合労働相談コーナーにおいて、相談員が労働者・事業主からの相談に対応し、法令、裁判例等の情報提供を行う事により迅速かつ適正な解決を図る事を目的としている制度です。
②都道府県労働局長による助言・指導
都道府県労働局長が、民事上の個別労働紛争について、その紛争当事者に対して紛争の問題点を指摘して解決の方向を示す事により紛争当事者の自主的な紛争解決を促進する制度です。
③紛争調整委員会によるあっせん
紛争当事者の間に公平・中立的な第三者として労働問題の専門家である各都道府県労働局に設置された紛争調整委員会のあっせん委員が入り、当事者間の話し合いを促進する事により、紛争の解決を図る制度です。
引用:厚生労働省【個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)】
労働者と事業主との個別労働紛争に対する解決制度として以上の3つの制度をご紹介致しましたが、他にも裁判所による調停や訴訟、労働審判制度というものもあります。続いては労働審判制度について触れていきます。
2.労働審判制度とは?
労働審判制度とは、解雇や賃金未払いなど、個々の労働者と事業主の間の労働関係トラブルを、適正且つ迅速に解決する為の制度です。通常の訴訟に比べて、簡易迅速に解決する事を目的に、2006年から開始された比較的新しい審判制度です。
労働審判は、裁判官(労働審判官)1人と労働関係に関する専門的知識、経験を有する労働審判員2人で構成された労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で事件を審理し、調停を試み、又は審判を行います。
具体的には、労働審判委員会が、まず調停という話し合いによる解決を試み、それでも話し合いによる解決が図れない場合は、審理の結果、認められた当事者間の権利関係と手続の経過を踏まえ、事案の実情に即した判断(いわゆる、労働審判)を行い、柔軟な解決を図る事を、その目的としています。
労働審判の終局方法として、①調停成立、②労働審判、③訴訟への移行という3つの方法があります。
①調停成立
話し合いがまとまると調停が成立し手続は終了します。
調停の内容は調書に記載され、条項の内容によっては強制執行の申し立てを行う事も出来るようになります。
②労働審判
話し合いがまとまらない場合は、労働審判委員会が、審理の結果認められた当事者間の権利関係と手続の経過を踏まえて、事案の実情に即した判断(労働審判)を示します。
労働審判に対して2週間以内に異議申立てがなければ、労働審判は確定して、その内容如何によっては、強制執行を申立てる事も出来るようになります。
③訴訟へ移行
労働審判に対して2週間以内に異議申立てがあれば、労働審判は効力を失い、訴訟手続に移行します。
3.まとめ
近年労働審判は、未払い残業代といった金銭に関係するものや、解雇関する申立てが増えています。
このような紛争解決制度があるとはいえ、トラブルの発生を未然に防ぐよう、企業はリスクマネジメントを行うことが重要です。
お困りのことがございましたら是非弊社へご相談ください。