2022.06.22
【令和4年4月1日施行】改正育休法における事業主の義務とは?
育児・介護休業法が令和4年4月1日より施行されます。
企業に対し「育児休業をしやすい雇用環境の整備及び、妊娠・出産の申し出をした従業員に対して個別の周知と意向確認」が義務づけられました。
今回は改正に伴い具体的にどのような対応をするべきか解説します。
1.背景
今回の改正は、短期はもとより1か月以上の長期の育児休業を取得する従業員が希望する期間に取得できるよう事業主が配慮する上での指針として示しております。
年々増加していた女性の育児休業取得率は、2008年の90.6%をピークとして、それ以降、厚生労働省の調査結果の直近5年間では、80%から83%の間を推移するにとどまっております。
また、男性の育児休業取得率は2020年に飛躍的に上昇はしたものの、政府が掲げていた2020年までに男性育児取得率を13%にするという目標は達成できませんでした。
このような背景から、従業員が仕事と家庭を両立できるような環境作りのために、改正がされました。
2.育児休業を取得しやすい雇用整備とは?
現行の育児・介護休業法では、具体的な措置についての規定がないため、育児休業の申請や個別確認に関して曖昧にしている企業も少なくないと思います。
まず、大前提として育児休業を取得しやすい雇用整備の措置とは一体何なのか?そして、改正前の現行法ではどうなっていたのかについて触れていきます。
2-1.育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
具体的に以下のようなものがあります。
(1).育児休業制度に関する研修の実施
研修はすべての従業員を対象に行うことが望ましいとされています。また、育児休業の取得を望む従業員への対応を間違えると、ハラスメントに繋がる恐れがあります。そのため、管理監督者には積極的に受けさせることが効果的であると考えられます。
(2).相談体制の設備
相談窓口、担当者を明確にし、社内周知を徹底させるといった実質的な対応が求められます。
(3).育児休業取得の事例収集、提供
自社における育児休業の取得者の事例を収集することで、育児休業取得に関する相談、対応を円滑に行えます。また、収集した社内事例を配布、イントラネットへ掲載等することで育児休業取得に対する社内全体の理解を深める効果も期待できます。
(4).育児休業制度、育児休業取得促進の方針の周知
社内通達やポスター等で育児休業制度、育児休業取得促進の方針を周知させる必要があります。育児・介護休業法の改正は今回取り上げた事項以外もあるので、改正点を踏まえながら労働者に育児休業制度を正しく理解させることが重要となります。
3.妊娠・出産の申し出に対して個別の周知・意向確認の義務化について
現行法では妊娠・出産の申し出に対する個別の周知・意向確認は努力義務でしたが、令和4年4月1日より上記は事業主の義務となります。
事業主の義務とは具体的に何をすればよいのか。次にそちらを解説します。
3-1.周知させる事項
以下の4点をすべて周知させる必要があります。
(1).育児休業・産後パパ育休に関する制度
(2).育児休業・産後パパ育休の申出先
(3).育児休業給付に関すること
(4).育児休業・産後パパ育休期間中の社会保険料の取扱い
※産後パパ育休は2022年10月以降の施行となります。
3-2.新制度の周知方法について
具体的な周知の方法としては、下記の(1)~(3)のようなものが挙げられます。
(1).面談の実施 ※TeamsやZoomなどを利用するオンライン面談も可です
(2).書面を交付する
(3).本人が希望すれば、電子メール等の送信も可
3-3.個別の意向確認について
育児休業取得の意向確認については、希望する従業員に対して取得を控えるような形での周知又は意向確認は認められません。こちらも、前述のように企業が従業員に対して取得の働きかけがなかったと回答した男性が6割以上であった事から、新たに明記されることとなります。
また、この意向確認についての条文とともに、妊娠又は出産等について申出があった等を理由とした不利益取扱いを禁止するという条文が新設されます。こちらの規定では、主に厚生労働省の指導や勧告等があったのにも関わらず、従わなかった企業を公表するという仕組みになっています。
5.おわりに
今回の法改正は、育児休業の取得率の向上を図り、仕事と育児を両立をしやすい職場環境を整えることが狙いです。施行日までに、就業規則の見直し、また、書類の交付や面談を行い、従業員へ周知させましょう。
※参考文献
労働基準法第106条
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第22条