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2022.03.30

変形労働時間制・裁量労働制の時間外労働と休日の取り扱いのおさらい

時間外労働をさせるには、労基法36条による労使協定(36協定)を結び、管轄の労働基準監督署に届出る必要があります。
労使協定(36協定)の締結・届出は、時間外労働の禁止(労基法32条)の免罰という効果があります。
したがって、労働者に時間外労働を命じるには、労使協定の内容を労働契約や就業規則、あるいは労働協約に定めておかなければなりません。
では、それぞれの働き方で、どのように扱い方が変わってくるのかを確認していきましょう。

変形労働時間制

1ヶ月単位・1年単位の変形労働時間制を採用している場合、時間外労働となるのは以下の場合となります。
※これらは労基法37条に基づく時間外労働の割増賃金の支払いを必要とする時間となります。

①1日について、就業規則などで定める所定労働時間を超え、かつ、8時間を超える場合
②1週間について、所定労働時間を超え、かつ、1週間の法定労働時間を超える場合
③変形期間について、変形期間における法定労働時間の総枠を超える場合

上記3点のことから、変形労働時間制は変形期間により時間外の計算方法が変わってきます。
下記に考え方の例を記載しますので、確認してみましょう。

  • 変形期間が1ヶ月単位の場合の、変形期間における法定労働時間の総枠

40時間 ÷ 7日 × 31日 = 177.14時間
40時間 ÷ 7日 × 30日 = 171.42時間
40時間 ÷ 7日 × 29日 = 165.71時間
40時間 ÷ 7日 × 28日 = 160.00時間

※上記時間を超えた時間が時間外労働時間 → 割増賃金の対象時間
※商業・映画・演劇業・保健衛生業・接客娯楽業で、従業員数が10人未満の事業所においては44時間で計算。

  • 変形期間が1ヶ月単位の場合の、必要とされる休日の日数

※1日の実働時間が8Hの場合
月31日の場合 ・・・ 177.14時間 ÷ 8時間 = 22.14日 → 必要休日数9日
月30日の場合 ・・・ 171.42時間 ÷ 8時間 = 21.42日 → 必要休日数9日
月29日の場合 ・・・ 165.71時間 ÷ 8時間 = 20.71日 → 必要休日数9日
月28日の場合 ・・・ 160時間 ÷ 8時間 = 20日 → 必要休日数8日

※1日の実働時間が7.5Hの場合
月31日の場合 ・・・ 177.14時間 ÷ 7.5時間 = 23.61日 → 必要休日数8日
月30日の場合 ・・・ 171.42時間 ÷ 7.5時間 = 22.86日 → 必要休日数8日
月29日の場合 ・・・ 165.71時間 ÷ 7.5時間 = 22.09日 → 必要休日数7日
月28日の場合 ・・・ 160時間 ÷ 7.5時間 = 21.33日 → 必要休日数7日

  • 変形期間が1年単位の場合の、変形期間における法定労働時間の総枠(1年365日の場合)

40時間 ÷ 7日 × 365日 = 2085.71時間

※上記を超えた時間が時間外労働時間となります。

※対象期間を平均して、1週間の労働時間が40時間を超えないように対象期間内の日・週毎の労働時間を決定することが必要となります。
※1年単位の変形労働時間制での時間外労働の算定方法は、【日 → 週 → 対象期間】の順で算定しますので、月ごとに時間外の確認・支払いは必要です。
※上記時間を超えているかどうかの確認も必要なため、年に1回、労働時間数の確認も必要となります。年に1回の労働時間数の確認で総枠を超えている場合は、追加の割増賃金の支給が発生することもあります。

裁量労働制

裁量労働制とは、労使協定でみなし労働時間を決定し、実際に勤務した労働時間がそれより長くても短くても、「決められた時間分働いた」とみなす制度です。
裁量労働制を適用するには、対象となる業務が決められているため、当てはまらない場合は裁量労働制を適用することはできません。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、業務遂行の手段、および時間配分の決定など、使用者が労働者に具体的に指示することが難しい業務で導入することができます。
対象となる業務は、次の19業務に限定されています。

①新商品・新技術の研究開発、または人文科学・自然科学の研究の業務
②情報処理システムの分析・設計の業務
③新聞・出版の事業における、記事の取材・編集の業務、放送番組の制作のための取材・編集の業務
④デザイナーの業務
⑤放送番組、映画等の制作の事業における、プロデューサーまたはディレクターの業務
⑥コピーライターの業務
⑦システムコンサルタントの業務
⑧インテリアコーディネーターの業務
⑨ゲーム用ソフトウェアの創作業務
⑩証券アナリストの業務
⑪金融工学等の知識を用いる金融商品の開発業務
⑫大学での教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)
⑬公認会計士の業務
⑭弁護士の業務
⑮建築士の業務
⑯不動産鑑定士の業務
⑰弁理士の業務
⑱税理士の業務
⑲中小企業診断士の業務

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、業務遂行の手段、および時間配分の決定など、使用者が労働者に具体的に指示をしない業務で導入することができます。
専門業務型裁量労働制のように、対象業務は限定されていませんが、どの事業場でも導入できるというわけではありません。
具体的には、次の4つの要件全てを満たした業務が存在する事業場に限られます。

①業務が所属する事業場の、運営に関するものであること
②企画、立案、調査および分析の業務であること
③業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があることが、業務の性質に照らして客観的に判断される業務であること
④企画・立案・調査・分析という相互に関連し合う作業を、いつ、どのように行うかなどについての、広範な裁量が労働者に認められている業務であること

裁量労働制の働き方は、「みなし時間分だけ働いた」とみなされる働き方となります。
例えば、みなし労働時間が1日8時間とすると、実際に勤務した労働時間が4時間でも12時間でも、「8時間勤務した」とみなされます。

そのため、みなし時間より実際の労働時間が短くても遅刻・早退等の控除をされることはありませんが、反対に、労働時間の方が長くても残業代がでることもありません。
※決定されたみなし労働時間数が法定の労働時間よりも長く設定している場合は、その分の割増賃金の支払いは必要となります。

  • 残業代の例

所定労働日数が21日の場合で、1か月のみなし労働時間数が189時間の場合
・法定労働時間は168時間なので、「189 - 168 = 21」時間は割増賃金の対象。
・1日1時間の残業代は、あらかじめ給与に含める必要がある。

また、基本、裁量労働制は残業代が追加で発生することはありませんが、休日出勤や深夜労働、欠勤の場合は下記のような取り扱いとなります。

  • 休日出勤をした場合

裁量労働制のみなし労働時間は、「所定労働日に◯時間働いたとみなす」というものです。
そのため、例えば土日祝休みの会社で、土曜日に休日出勤をした場合は、働いた時間分の給料の追加支払いが必要です。
※法定外休日と法定休日によって割増率が変わります。

  • 深夜労働をした場合

22時から翌5時まで、深夜労働をした場合は、裁量労働制であっても25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
※裁量労働制なので、深夜に働いたとしても、「みなし時間分だけ働いた」とみなされます。
※そのため、追加で支払いが必要になるのは割増し分だけとなります。
※「割増し分」とは、割増率が25%の場合、0.25分だけの支払いという意味です。

  • 欠勤をした場合

裁量労働制でも、欠勤した場合は「欠勤」として扱われることになりますので、会社の規定によっては給与から欠勤日数分減額されます。

裁量労働制とフレックスタイム制の違い

裁量労働制とフレックスタイム制は、制度として「似ている」と混同されることが多いですが、労働時間の考え方は全く異なります。

・裁量労働制実際の労働時間に関係なく、「みなし時間分だけ働いた」とみなして管理される。
・フレックスタイム制実際の労働時間を元に、労働時間が管理される

※裁量労働制は実際の労働時間に関係なく「みなし時間分だけ働いた」とみなして、1か月の勤務時間を管理します。
※フレックスタイム制は「◯ヶ月」という期間の中で、「◇時間」という所定労働時間あり、その所定労働時間を元に、実際の労働時間を管理します。

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